よねろぐ!

新潟県上越市で活動中のサポートドラマー。音楽から超どうでも良いことまで幅広くカバー。美味しいものはすこしだけ。

ロケットマン(日記177)

エルトン・ジョンの人生を描いた映画「ロケットマン」を見た。

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 僕の人生で初めて&最大のライブイベントが98年東京ドームのビリー・ジョエルエルトン・ジョンのジョイントコンサート「FACE TO FACE」。ビリー・ジョエルピアノマンストレンジャーが日本で大流行した世代ド真ん中の母親と、その幼馴染みさんに連れて行ってもらった。僕は9歳だった。うつ病を克服したビリーの物哀しいメロディが流行当時女学生だった僕の母親の琴線に触れたのだろう、来日公演チケットが取れた後の母親の浮かれようは今でも覚えている。僕はといえば、当日の東京ドームで最年少観客としてなにかスペシャルなことでもあるんじゃないかと身構えていた。浮かれていたのである。

当時の日本国内でビリーとエルトンの知名度がどうだったかはわからないけど、正直ビリーの方が有名だったのではないかと思う。ステージ上ではジャケット着用、グランドピアノにマグカップを置いて演奏するビリーは誰の目から見ても「ピアノマン」そのものだった。

一方、エルトンは奇抜な衣装と変なサングラス。逆に奇抜な衣装を着ていないエルトンはシンプルゆえにショートヘアーのおばさんのように見えた。白人特有の男らしさも感じられないベビーフェイス。それでいて奇抜。要するに視覚的に「変な人」なのだ。僕は正直、この人がユア・ソングを歌っていると最初は信じられなかった。しかし、僕の人生で「見た目で人を判断してはならない」という教訓がこれほど活きた実例はなく、この「変な人」こそ、誰が聞いても心が静まり癒やされてしまう魔法のような優しいメロディを奏でるエルトン・ジョンその人なのだ。

映画本編では、いきなり変な衣装のエルトンが登場する。集団カウンセリングを受けているエルトンが過去を振り返るという目線で進行していき、幼少から抱える家族の悩み、辛い子供時代を過ごしたことなどが、カウンセリングを受けている過程で過去を振り返るように描かれている。才能と度胸でチャンスを掴み、爆発的に売れたエルトン。この時代のミュージシャンが酒と薬におぼれてしまうのは、フロントの売り出し方に問題があったり厳しい契約に縛られてミュージシャン主体の公演や曲が打ち出せない、なんて事情があるのかもしれない。一気にセレブへと駆け上がったエルトン。その反動は大きかったようだ。

人間不信と同性愛。両親に愛された経験が乏しいエルトンの苦悩が明るく、暗く描かれている。ハグをしてくれない父親、母親の浮気を目の当たりにしてしまった少年時代。王立ピアノスクールに付き添ってくれたのは祖母だった。そんな姿を見ると、エルトンの代名詞と呼べる曲「ユア・ソング」の優しくて切ない旋律とメロディは寂しく過ごした少年期を救済する曲なのかなと、思いを馳せる。

映画はエルトン・ジョンの曲がたくさん使用されたミュージカル調で、テンポもよく爽快に進んでいく。映画自体は映像が明るく華やかなので重すぎないエンターテイメント性のある作品になっており、エルトンの生い立ちに興味がない人でも楽しめるはず。見ていて心が落ち込みすぎないから、週末にソファーに座ってコーラでも飲みながら見るのに丁度よいと思う。最後はちゃんとハッピーエンドだ。

人はどんなに暗い過去があってもそれを糧に明るく生きる努力を怠ってはいけないのだと思う。そんなことを思った映画だった。