よねろぐ!

新潟県上越市で活動中のサポートドラマー。音楽から超どうでも良いことまで幅広くカバー。美味しいものはすこしだけ。

「二軍監督の仕事」育てるためなら負けてもいい(日記191)

昨年を振り返る話になるが、2021年のプロ野球日本シリーズは熱闘、熱戦、幾度のシーソーゲームの末、僕の応援するヤクルトスワローズが制した。2019年、2020年と2年続けてセ・リーグ最下位。そこからの日本シリーズ優勝は後の球界史に劇的な快挙として語られるだろう。
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ここからヤクルトについて色々と書いていくので、先にオリックスのことを書いておきたい。日本シリーズで好試合を繰り広げたオリックスバッファローズもピカイチの輝きを放っていて、野球ファンとしてものすごく興奮した。やはり野球は面白い、と心からそう思うことができた。

山本由伸投手に苦しめられたし、紅林内野手の好守備はため息と共に惚れ惚れした。T-岡田の打席での威圧感は画面越しにも感じられたし、モヤ、ジョーンズの助っ人外国人の存在は本当に恐怖だった。そう、恐怖である。僕は日本シリーズオリックスのクリーンナップが近くなると恐怖を感じていた。クリーンナップだけでなく、どの打順からでも点につながる。中嶋監督の殺気立った目線、何をしてくるかわからない采配は鋭く、5戦目は戦々恐々とした。

オリックスもまた2019年2020年とリーグ最下位からのリーグ制覇であり、日本シリーズ出場だった。中嶋監督は名将そのものだ。

日本シリーズ序盤を振り返ると、ヤクルトは早々に3勝をあげた。僕はシーソーゲームとなった第5戦を近所の釜めし屋さんで迎えた。木曜日の夜。そこのオヤジさんが古くからの野球ファンでドラフトについても詳しく、ここなら野球中継が見れると踏んだからだ。都会にいれば小洒落たスポーツバーでも行くのだろうが、田舎暮らしの僕にとって思いつく場所はこの釜めし屋だった。ちなみに料理はとても美味しい。

予想は的中し、日本シリーズ中継が流れていた。あと1勝。東京ドーム。その時の僕の胸中は今晩ヤクルトの優勝が決まるだろうからTwitterで実況でもしながら、都内のヤクルトファンの友達にリプライを送って祝杯を上げ、暁にはメニューにないソーセージの盛り合わせでも食べようじゃないかと企んでいた。8回、山田哲人の同点ホームランで歓喜したものの、次の9回にジョーンズから放たれた勝ち越し打に絶句。祝杯とソーセージの盛り合わせはお預けとなってしまった。

第6戦の神戸は投手戦となり綱渡りのような緊張感が永遠と続いた試合だった。延長12回、代打の神様川端のヒットと塩見のナイスランで死闘5時間というとんでもない試合を制した。野球は面白い。緊張しっぱなしの最高の試合だった。

日本シリーズ制覇、シーズン終了の感想としては個人的にベビーフェイスだと思っていた村上があれほど眼力が鋭く闘志溢れるスラッガーに成長するとは予想外だった。7月の阪神戦だったと記憶しているが、阪神サイドからのヤジに真っ向から向かっていく三塁手村上の立ち姿はチームを背負っている強い責任感が感じられた。また、抑えのマクガフの強いメンタルは終盤までブレなかった。そーゆーことヤ。

シーズン序盤に廣岡と電撃的なトレードで加入した田口もきっちり活躍していたし、捕手中村がベストナイン入りを果たした。ライアン小川の完封試合も記憶に新しい。外国人選手のオスナ、サンタナもチームによく馴染んでいたようだ。広島との「もう一発いてまえ」事件は腹が立ったが、高津監督が率先して相手ベンチに出向くなど、思い返せばあの頃から既に高津監督と選手の一体感は断固たるものだったのだと思う。青木の涙は何度見ても胸が熱くなる。まだまだもっと書きたいがこの辺にしておく。思い返したらまた興奮してきた。

僕の中でヤクルトスワローズ高津臣吾旋風が巻き起こっている。優勝を祝してヤクルト製品を買うだけでなく、高津監督が2018年に出版した「二軍監督の仕事 育てるためなら負けてもいい」をKindleで購入し読んでみた。高津臣吾監督は新潟アルビレックスBCで活躍していたこともあり、県内ニュースなどで話題となっていた為親しみを覚えていた。この本は凄かった。

ここまで日本シリーズの感想を書いてきたが、これらヤクルトの選手が活躍することを予言していたかのような書籍がこの本だ。これはつまるところ2018年の高津二軍監督時代のヤクルトの育成方針がことごとく的中していたことの証明となった本だと思う。当時の育成方針と育成計画がブレずに選手が伸びていった結果が日本一の快挙に繋がったのだ。

本の中で「育成計画」「育成プラン」という言葉がよく出てくる。ヤクルトの強さは「選手層が厚いとは言えないチーム事情」とはいえ、選手の育成と起用プランが一軍と二軍を貫いており明確であることが重要な要素だと明らかにされている。タイトルの通り、「育てるだめなら(二軍においては)負けてもいい」のだ。

僕は本当に失礼な話、二軍、ファームと聞くと「一軍に登れない能力が不足している選手たち」というイメージを持っていたが、この本を読んでその意識は一新された。高卒ルーキーを社会人プロスポーツ選手として教育する場であり、ベテラン選手や怪我復帰選手の調整の場でもあり、その目的は一軍においてシーズンの勝ち星を増やしていくことだ。

ある書籍で「氷山は水面下にその8割があり、氷山が安定しているのは隠れている8割があるからだ」と書いてあった。なるほど、今回のヤクルトの大躍進はこの水面下の氷山の部分を明確な計画と目標を持って強化した結果なのだとよくわかった。

 

社会人生活がそろそろ10年目の僕にとって「明確さ」とはかくも重要な要素であると、つくづく思い知らされてきた。僕は自分の弱点として決断力と明確さが決定的に欠如していると気付いている。これは経験の不足とメンタル面に問題がある。逆に、上司や先輩が方向性を示し決断をしてくれている環境であれば、それなりの力を発揮できるようになってきた。これは社会人10年目であればむしろ遅いのだろうが、鈍足な僕でもやっと次のステージが見えて来たような気がする。

こんなに素晴らしい大人にはそうそう出会えない。高津監督のように前向きで情熱的で、経験に裏付けされた計算高さを持ったプロの采配を毎日見られることは喜びである。

2022年、プロ野球開幕。絶対大丈夫。