よねろぐ!

新潟県上越市で活動中のサポートドラマー。音楽から超どうでも良いことまで幅広くカバー。美味しいものはすこしだけ。

ゲド戦記(日記129)

 「人生に一度は、映画館でジブリを」ということで、今回はゲド戦記を見てきました。初めて見たのは10年くらい前。大学の図書館で授業のコマが空いた時に。

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 そのときは正直よくわからないことの方が多くて「宮崎駿じゃないジブリはだめだな」とか思ったのですが、今回見るに当たって少し下調べをして準備を整えたら、10年前の僕にはわからなかったことが見えたような気がしました。

 下調べといっても例のごとく岡田斗司夫さんの評論動画と、ジブリ映画ファンのブログを見ただけなんだけども。

 まず宮崎吾朗監督について。僕は正直「親の七光りはだめだな」と思っていた。youtubeに上がっている作成秘話のドキュメンタリーも宮崎駿に叱られている宮崎吾朗という色眼鏡でしか見ていなかった。

 でもオタキング岡田斗司夫さんの解説や秘話を聞くと、宮崎吾朗監督の凄さと「天才」宮崎駿の裏側が見えてきました。

 幼少期、宮崎吾朗監督はずーーーっとアニメがやりたかたそうです。でも子供の頃から家で漫画や絵を描こうものならそれを見つけた「天才」宮崎駿に「お前には才能がない」と貶され、もともとジブリで働いていた母親にも「あなたはアニメをやらないで(駿が家庭を顧みないで没頭していたから)」と言われる。そんな幼少だったそうです。

 大学卒業後、ランドスケープコンサルタント会社に勤め、建設コンサルタント、環境デザイナーとして社会人になった吾朗監督。真面目に仕事をこなし2~3年で会社の仕事のほとんどを覚えてしまいました。すごくね。

 その後、三鷹の森ジブリ美術館建設の際には宮崎駿と施工業者の間に入って、イメージ先行の「天才」宮崎駿が出す(建築法的に)無理な注文に折り合いをつけるという誰にもできないことをやってのけ、ジブリ美術館の館長へ。

 この頃のジブリは(「天才」宮崎駿がダメ出しをしまくるため)若手の監督育成が上手く行っておらず、宮崎駿と渡り合えるのは吾郎監督だけ、という状態だったそうです。

 だいぶ端折りましたがそういった経緯もあり宮崎吾朗監督のゲド戦記が始まったわけです。

 

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信じられないだろ、令和なんだぜこれ

 さてここまで書かなければいけなかったのは、このジブリ内部、宮崎家内部の話がなければ僕は宮崎吾朗監督のことを正しく見ることができなかったからです。

 僕の目には「親の七光りで宮崎駿からもダメ出しを喰らいまくる未熟な監督」という姿に映っていた。でも本当は「天才」(すぎて後進の育成ができない)宮崎駿を抑えつつジブリの次世代を担えるのが、この吾郎監督しかいなかった。

 「そんな内部のこと、映画見るのに関係ないじゃん」

 そうです。関係ない。でも語らずにはいられなかった。

 

 さて映画ゲド戦記。映画だけを見るとちょっと分かりづらい部分がやはりありました。原作読んだことある人には光と闇の対比という構造だと、それなりにわかるそうなのですが。

 テルーがドラゴンになったところと、そもそもアレンが父親を刺した理由がちょっとわからなかった。このままだと厨二メンヘライタイタ主人公になるぞアレン。17歳なんて拗らせるには香ばしい、いい年頃じゃないか。なんかシンジくんみたいだった。「これは僕たちの希望の槍なんだヨォ」

 ていうかハイタカと一緒に来た大きい街に王殺しの追っ手が来てないってことは、父親生きてるんじゃないかと思ってる。最初アレンが逃げている「何か」は父親を刺した罪悪感から逃げてるんだと思ったけど、クモの館の前でテルーと会話してるアレンの分身のセリフを聞くとどうも違うらしい。

 あと気になったところは明るい時間に人さらい(ウサギ㌠)がはびこる大きい街の治安ガバ。ついでにクモの館の警備もガバ。ただのカカシもいない。

 ハイタカが「着いたぞ」って言って大きい街がバーンって全体が見えるカットをちょっと注意して見てたら、水道橋はところどころ壊れてるしレンガ造りの建物も結構壊れっぱなしだし、この街治安どころの状態じゃないのかな。治安維持ってレベルじゃねぇぞ

 それと、この大きい街の治安の悪さを放置してるのに賢王と呼ばれているアレンの父親。この治安の悪い大きい街は国境を超えた先にあったのかしら。

 作中のBGMが同じメロディーの使いまわしで、なんというか抑揚がない気がした。

 改めて見て一番驚いたのは、絵がめっちゃ怖くて普通にホラーみたいにおどろおどろしく描かれているところ。毒飲まされたアレンの顔がカットごとに確実に悪化してるところとか、クモが最後に化けの皮剥がされたときの黒目とか。(あの黒目、途中からGorillazに見えちゃったんだよな)

 全体的にのっぺりとしている気がした。というのは要所で流れるBGMが同じメロディーで抑揚が抑えられてしまっているのと、息抜きポイントが少ないように思えた。

 ハイタカがウサギを欺くのに変な顔になったシーンくらいしか落ち着けるところがなくて、観ていてずーっと緊張の糸がピーンとしてたからちょっと疲れた。この点を好き勝手言わせてもらうなら、ウサギとその部下をもう少しポップに、小間抜けに描いても良かったんじゃないかと思う。けどそうしたらクモのクール強キャラ感が薄まるか。バランスが難しいキャラが多いな。

 テナーとアレンが野菜の苗を植え直してるシーンの手付きがすごく丁寧なのは、宮崎吾朗監督の専門だからかしら。ここすごく好き。

 アレンの目線だけど主人公ハイタカなんじゃないかしら。大賢人。クール。

 ぶら下がり=勝利確定演出はやはり王道だな素晴らしい。

 ウサギ㌠が「また来るぜ」って言ってるのに無策で過ごしてるテナーさん。そりゃ捕まっちゃうじゃん。

 あと書きたいことなんかあったかな。アレンが宮崎吾朗監督で?ハイタカ鈴木敏夫で?宮崎駿が刺されて?賢王と呼ばれる宮崎駿の王国は実は治安が悪くて??...え??は???

 

 そんなところかな。原作読むとめっちゃわかるらしいです。

 久しぶりに見たゲド戦記でいろんな発見がありました。なんか、そういう内側の部分も含めてジブリってすごいなと思います。そして宮崎吾朗監督のことがとてもとても好きになりました。三鷹の森美術館もぜひ行きたい。

 あとはもののけ姫ナウシカだ。