2023年の初映画は「この世界の片隅に」を見ました。
戦時中の日本を舞台にした作品は悲しい気持ちになってしまうので公開当時から進んで見る気にはなれませんでしたが、今となっては映画館で見たかったなと公開しています。確か高田世界館でも公開されていたのを記憶しています。ああ、あのとき見ておけばよかったなと。
呑気で間の抜けた少女が苛烈な時代をただ健気に生きている姿にこれほど感動できるとは、想像もしていませんでした。戦前から戦時下、終戦直後の生活を庶民目線で、何も特別じゃない主人公すずの目線で描かれていました。
戦時下にあっても庶民の日常と感覚は朗らかな一瞬もあって、ささやかな出来事にも笑って過ごせたらそれで良いと思えることが、美しくてかけがえないなと素敵なことに思えます。
淡い恋と、ヤキモチ。新しい生活、のぼっとしたお義父さん、身体の弱いお義母さん、きつい義姉。優しい旦那。呉の街。
まだ朝の暗い時間から人々は働き始めて、朝食の支度に立つかまどの煙の情景だったり近所の奥さん方との交流だったり、日常の美しさの描き方が本当に素晴らしい。そしてだんだん、確実に戦時下の生活に変わっていく。でもすずは相変わらず呑気に、健気に、限られた生活でもかすかな楽しみを忘れない。「みんなが笑ろうて暮らせりゃええのにね」
物語中盤から後半の辛さは、筆舌に尽くしがたい。死別。欠損。後悔。敗戦。やるせない叫び。すずの声優、のんが凄すぎる。
それでもやっぱり、毎日のささやかでかすかな笑いと楽しみに希望が持てる。そんな物語でした。見終わったあとは心打たれて感動を表せる気がしませんでしたが、もう一度見て、少しだけ希望があって、間抜けなすずに勇気づけられて。
縁のある人は何度も出会う。
この世界の片隅に、見つけてくれてありがとう。とっても素敵な映画でした。