よねろぐ!

新潟県上越市で活動中のサポートドラマー。音楽から超どうでも良いことまで幅広くカバー。美味しいものはすこしだけ。

たまにはドラマーっぽことを書こうと思う(冬)(日記189)

数年前、敬愛するドラマー、ギャビン・ハリソンのシグネイチャーモデルスネアが高い!という切り口から始まり、最後は「機材は大事にしなきゃね」というところで終わった記事を書いた。思いの外評判で、まんざらでもない感覚に酔いしれていた。誰かに読まれる想定をしておきながら自分の意見や本音を織り込むのは最高に気持ちが良い。

yoneco303.hatenablog.com

冬場は特殊な仕事をしているお陰で収入が増える。なので、僕は落ち着いた春先に道具を新調したり、買い替えたりすることが多い。その反面、夏くらいまで毎月数万円の返済をすることになるが、それがここ数年の大きな流れになっていた。今年も思いつきサウンドハウスAmazonを巡る旅に出ている。が、正直今のセッティングで自分のドラムはほぼ完成というか、完結している節があるので「はて」と思いながらサイトを巡っている。

「自分のドラムはほぼ完成」なんて書くと鼻っ先を折られてしまいそうだがそういう意味ではなくて、今の活動頻度でライブハウスやスタジオの移動とセッティングの手間と自分が表現したいドラムを天秤にかけると、丁度今くらいの機材で収まりが良いという意味だ。同じようなことを先の記事にも書いたが、数年経った今も同じ考えだ。

ドラム歴17?18?年くらいの僕。まだまだ未経験なことは多いが、ここで過剰に這いつくばって頭を垂れるような乏しいキャリアでもないので、ちょっとの背伸びは許してもらいたい。

話を戻す。「はて」と思っていたら「お」と気づいたことがあった。最近スティック買ってない。僕が住んでいる上越市はコト楽器屋が少ない。高田本町の二葉楽器か、上教大近くのハードオフくらいなもので、消耗品の類はどうしてもネットで買うことが増えてしまう。が、スティックに関しては僕は触ってしっくり来たものだけを買うようにしていた。また、左右のスティックの重さをなるべく均一にしたかったので、重さにもこだわった。

僕が一番スティックについて研究していた大学生の頃、川越駅近くのイシバシ楽器のスティックコーナーには重さを確認できる計りが置いてあり、重さを確認することができた。自慢じゃないが僕はスティック1本の重さで±4~5グラムくらいの違いは持てばわかるようになった。この話をドラマーにしたことがないのでわからないが、もしかしたら「そんなの当たり前じゃん」となるかもしれない。

この特技(?)が日常生活で生きる場面はスーパーの野菜コーナーしかないが、それでも役に立っている。キャベツ買う時とか。どっちが重いかな、とか。

なぜスティックにこだわったかというと、技量が拙い初心者の頃は特になるべく同じ機材と同じ環境でプレイすることが望ましいと考えているからだ。ドラムが上手くなるということは身体の構造が変化することに等しい。自分のポテンシャルが高くない頃や、自分のイメージと身体の動作が一致していない頃は「自分のコンディションが悪いのか、機材が合っていないのか」という悩みに陥りがちだが、今となってはそんな悩みは無駄でしかないと思っている。先週の練習ではできていたのに今週はできなかった、という経験は誰にでもあると思うが、機材のせいかな?という不安を消すだけで悩みの半分はなくなったと言っても良く、その分上達は早まる。

僕がこの考えに至ったのはバスドラムのダブルストロークができたりできなかったりした経験があったからで、その際は自分のペダルを購入したことで迷いが消えた。(その後、今度はペダルのバネの跳ね返りの強さと、バスドラムのヘッドの張り具合について考えることになるが...)

とにかく、なるべく同じ機材、同じ環境で練習することに越したことはない。初心者だけでなく中級者も、もしかしたらプロでも同じことを考えているかもしれない。なので、その日によってスティックが重かったり軽かったりされていては困るのだ。もし普段より重く感じたのなら、それはモチベーションか単純に疲労による影響があると考えてまず間違いない。原因を絞し、各個撃破していけば良いのだ。

 

大前提としてどの楽器屋さんでも、スティックコーナーに置いてある同じモデルであっても重さや質感にかなりバラつきがある。それもそのはずで、各モデルの規格は太さ、長さ、木材の種類(あとは先端チップの種類だとか、表面の仕上げだとか)でまとめられて売られている。同じ木材でも密度が異なる部位があることは当然のことだと考えている。少し前に仕事で材木屋さんのプロとお話する機会があったのだが、同じ木の種類でも群生しているものの方が均一に成長していて材料として安定しているのだそうだ。群生している材料は風の影響を受けにくく、切断したら内部で割れていたということはない。あとは斜面に生えている場合、山側か谷側か、日当たりの方向はどうか、それらでもやはり違うらしい。匠を感じた。

僕はバラ売りされているスティックは「この中からお気に入りの1組をお求め下さい」という意図があるのだろうと解釈している。が、モデルによっては既に2本1組で厚紙などで括られている場合もある。僕の経験上、その括られている1組が均一な2本である、というわけではないコトのほうが多い。木材だから。

湿度なのか、気温なのか、何が影響しているかわからない木材であるスティックは環境、特に季節によって含水率(湿り気)が変化しているはずである。そして僕らの肌、手のひらも乾燥や油脂によって日々変化していると言って良いと思う。なので、触ったときの感覚というものを僕は大事にしてる。先に書いたように数値化できる重さでまず一括し選別、その後触った感覚で選別すると、その日に買うスティックはだいたい2本、1組程度になる。楽器屋さんで一度買ったらしばらく待ち、次の入荷で追加された中からまた選別し、自分の中の一軍登録本数を増やしていく。

スティックの湿り気について書いたが、不思議なことに折れたスティックはカラカラに乾いてミイラのようになってしまうのが早い。理系の脳で考えると、折れることで空気に触れる面積が増えたことで乾燥が促進されるのだろうと予想しているが、命を失ったように感じてしまう。

僕はライブの時、スティックケースに待機している「スタメン」は大体6本。控室に置いてあるバッグにはもう4本くらい、合計10本は用意している。その日のリハ前くらいに全部触って「これがいい」「これはちょっと」と選別している。新品が良いということは決してない。新品はよく滑る。

 

ここまで講釈をたれて、じゃあ何を使っているんだいとハードルが上がってしまったかもしれないが、僕が普段使っているスティックはPearl110HC。多分全国どこの楽器屋さんでも売っている王道中の王道、普通オブ普通のスティックだ。

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材質はヒッコリーが良い。同じサイズでオーク材の110ACの方が安価で「亜種」みたいな感じがしてかっこいいが、オークは新品でもパカーンと折れることが多いのでおすすめしない。ヒッコリーならパカーンと折れず、パラパラと徐々に砕けて劣化していく。密度が高く、タフだと思う。叩いたときのしなり具合と反発した感覚がちょうど良く、チップも丸い形状でバズがしやすい。硬いライドシンバルをチップで叩いたときの反発感、スネアをリムショットしたときの音の抜け感、とてもしっくりくる。ライブ中、少し固めの返しをもらった時などは胸がすくような気持ちだった。ドラムセットが、シンバルが鳴るのは当然のことだが、僕が手にしているこのスティックも同じく鳴っているのだと気付かされる。

女性ボーカルでのバンドであまり大きな音を出したくない時、腕の振りを大きくしたくない時でも適度な重量感があるので最適な音を出しやすい。同じモデルに110MCというメイプルでできたスティックもあり、軽くて結構好きだが店頭であまり見かけない。比較的入手しずらいように思う。

それに比べ、この110HCは先にも書いたが(多分)全国どこの楽器屋さんでも購入することができる。遠征の緊急時でも入手できるはずだ。新品をそのまま本番で使用するのは危険だが、スネアの角に100発も叩けばいい具合に凹凸ができて摩擦が増加しグリップが上がる。

「普通」「汎用」は決してネガティブな形容詞ではない。当たり前に売っている110HCは信頼されている証だと言える。本数が多く出ているということは、先に書いた選別作業もしやすく、より自分の求める1本を探すチャンスが増えるメリットもある。

スティックのことを書いていて大事なことを忘れていた。僕らドラマーは否応なしに手の平の皮が進化していく。ギタリストの指先が弦に負けないように固くなっていくのと同じように、僕らドラマーはスティックと皮との摩擦により出来る水疱(まめ)との戦いから逃れられない。

ここまで散々書いてきた「しっくりくる」という数値化も表現も難しい主観の、ひとりよがりな感覚はスティックだけでなく、手の平のコンディションも過分に影響してくる。手の平、というか指の付け根、マッチドとレギュラーによっても変わるのだろうが、僕の場合は人差し指の付け根、親指側を鍛えるのにとても苦労した。水疱ができてしまえば練習はできないので、何度も水疱を破り生皮で数日染みる思いを我慢し、再生してきたらまた練習する、人差し指が使えないなら中指を支点にしてスティックを振り、中指に水疱ができたら薬指に支点を、次は小指に。いよいよ親指に水疱ができてしまったら小指の付け根に支点を持っていき、普段とは別の握力でも叩ける、そんな練習をしていた。こんなことをしていたのは当時刃牙を読んでいたせいだと思う。

ライブのときは高揚感から普段より大きな動きでドラムを叩くことが多い。曲いかんによっては握力を使い果たしてしまう場合があり、曲の間奏で気づいたら左手がしびれていたなんて経験も実はこの1年の間にもあったりする。てへぺろでやんす。

さて書きたいことを書いてすっきりした。ここまで講釈垂れ流しといて、実はこの冬、初めてスティックをAmazonで購入してみた。やっぱりお店で買うのが一番、となるのかどうか。

また話題にします。