よねろぐ!

新潟県上越市で活動中のサポートドラマー。音楽から超どうでも良いことまで幅広くカバー。美味しいものはすこしだけ。

神田松鯉著「人生を豊かにしたい人のための講談」(日記155)

人間国宝で講談師の神田松鯉先生が最近出された著書「人生を豊かにしたい人のための講談」と、You Tubeで国際情勢解説チャンネルをやっている及川幸久さんの著書「伝え方の魔術」を読みました。伝え方の魔術の方はあと60ページくらい残っているので、今回は「人生を豊かにしたい人のための講談」の感想を忘れないうちに記したいと思います。

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にしてもコメダ珈琲は本を読んだり勉強するのに最適ですね。思い返せば2年前、仕事終わりにコメダに通い国家資格の勉強をしました。コメダのおかげで合格したようなもんです。

 そもそも僕は神田松鯉先生について一年前は全く知りませんでした。先生を知ったきっかけはちょうど一年くらい前、テレビでもおなじみの6代目神田伯山がその襲名披露公演の様子をYouTubeに公開し、楽屋での演者同士の様子も映すという画期的な演出をした際に高座に上る前の着物に着替えてもいないオフな松鯉先生がゆるめのインタビューでちょっとお話されていたのを見て、

ああこの人が神田伯山(当時松之丞)の師匠さんか、と思ったのが知ったきっかけです。とてもお優しい笑顔で朗らか、でも他の芸人さん、演者、落語家さんから確実に尊敬されているその先生のお姿がとても印象的でした。そして僕はこの一年、YouTubeとラジオ「問わず語りの神田伯山」で伯山を追いかけていたわけですがラジオ内で度々、師匠である松鯉先生のことを話題にする伯山。それらを聞いているうちにすすすっと松鯉先生の人柄というか、親しみのようなものが自分の中に刷り込まれていったわけです。刷り込まれている中で不思議なもので、こう松鯉先生がなにか自分に近くて、昔から慕っている存在のような錯覚に陥っていました。この現象を恋と呼ぶのだと思います。

そして昨年の秋ごろだったと思いますが、前述のラジオ内でこの本のことを紹介していて10月末に発刊。僕が手に入れたのは11月の中頃だったと思います。学生時代あんなに本を読んでいたのに、このところ読書から離れていたせいもあって手に入れて満足してしまい、実はまだ読んでいなかったのです。

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 そうそう、コメダ珈琲といえばシロノワールです。2冊ほぼ一気に読んだので途中に甘いものが食べたくなって。ミニサイズです。甘いシロップ冷たいソフトクリーム、それに溺れる温かいパイ生地が美味しくて美味しくて大好きです。ちなみにこのブログでは序盤と中盤の間にこの「そうそう」という言葉を意識的に使っています。これは「問わず語りの神田伯山」内で伯山先生が使っているのをマネています。あとライブ終わりに「今日も良い出来でした」とツイートするのも伯山先生のマネです。この一年でだいぶ染まってきています。一応ステージに立つ機会がある人間として、歴史と文化のある講談から今キラ星のごとく現れたスター、6代目神田伯山にあやかりたいと思っています。コロナには早く収まってもらって、新宿末廣亭池袋演芸場で生の講談や落語、演芸を聞きたいですね。

さて話を戻します。発刊してからまだ数ヶ月なので内容は伏せますが、読んだ僕の感想としては、文章から溢れ出てくる松鯉先生の優しくて朗らかなお人柄と講談や伝統芸能に対する心からの愛情、そして現代に限らず各時代に関する深い教養を基にした考察や見聞、それらに寄り添う意見にとても感動しました。伝統芸能人間国宝なので「かくあらねばならん」といったような硬い(説教臭い)意志があるかと思ったのですが、時代に合わせるべきところは合理性を持って合わせるという柔軟性の幅がとても広い印象でした。でも芸能の核となる譲れない部分は厳しさを持って次の世代に引き継ごうとされているのがわかりました。なるほど、ご自身の襲名披露公演は伝統芸能では異例の場所であったようで、記されている若手の頃のエピソードを読むとその柔軟性も納得がいきました。この若手時代のエピソードはすごいですよ。読んでいるときに自分がその会場にいたかのような感覚になります。情景描写がものすごい。

ああ、これが「芸」なのだなと感銘を受けました。やはり物語を人に教える芸能で、その人間国宝たる巨大なキャリアがこの文章にふんだんに織り込まれています。新書という軽く読める体でありながら、裏側に見え隠れする智慧は深い渓谷のようであり、巨大な山脈のようでもある。これが、今の時代に寄り添ってくれた人間国宝神田松鯉先生が僕らに「講談って面白いですから、興味を持ってみてくださいね」と送り出した1発の銀弾のような気がして、とても尊い気持ちです。伝統芸能全体を背負って、もう一度光を当てたいんだろうなって思いました。実際僕はこうやって、テレビラジオYouTubeで見聞きした講談と著書で「講談すごい、伝統芸能すごい」ってなっているわけで。なので、県をまたいで自由に都内でもどこでも行けるようになったら本物を見に行きたいと思っています。

さっきも書きましたが、僕が行きたい寄席の一つがこの本の中でも紹介されている新宿末廣亭というところなのですが、受付(テケツ)にジロリという看板猫がいるそうでその子にも会ってみたい。そういえば今日は2月22日だ。

さて、帯にある通りこの本は「何度でも弟子入りしたくなる歴史的名著」です。これ読んだら松鯉先生に弟子入りしたくなってしまうくらい、重複しますが先生の優しさと愛情に溢れた一冊です。率直に思ったことを書くと「こんなん読んだら松鯉先生のところに入門したくなっちゃうじゃん」です。

最後に今、YouTubeで公式に見ることができる講談で僕が好きなものを貼っていきます。どれも6代目神田伯山先生のYouTubeチャンネル「はくざんティービィー」から配信されているものです。


【講談】「グレーゾーン」in 新宿末廣亭(2020年2月17日口演)【真打披露目ver.】

伯山先生が作った新作、グレーゾーン。稀代の天才と呼ばれる所以がこれ。プロレスと笑点をクロスさせた笑えて泣けるお話です。

 


【#01】畔倉重四郎「悪事の馴れ初め」(1席目)【全19席】

大悪人、畦倉重四郎の物語。全19席とめちゃ長いですが僕はこれの19席目、大悪人畦倉が世間一般の善人に対して物言いをするシーンが、悪の根源を表していて好きです。悪事を働く畦倉の口調がだんだんと、震え上がるような怖さになっていくのは本当に見事です。テレビでは毒舌キャラの伯山の実力が。

 


【講談】神田伯山「中村仲蔵」in 浅草演芸ホール(2020年2月21日口演)

江戸時代、血統がモノを言う役者の世界において智慧と勇気で名を上げていった初代中村仲蔵の物語。良い役が貰えない不遇の時期と起死回生の役工夫に至るまでの歯を食いしばるような苦悩の表現が見もの。舞台に上がる者は中村仲蔵のようにありたいものだと深く感動しました。多分、中村仲蔵は講談ではなく落語なのですが伯山先生がやってるので一応紹介しました。面白いですよ。

他に動画は貼りませんが、怪談の真景累ヶ淵宗「悦殺し」は震え上がるほど怖くて好きですし、「和田平助」も痛快で面白いです。眠れないときにBGMとして聞くのなんて良いのではないでしょうか。情景が浮かんですうっと眠れるかもしれません。熱くなって目が覚めるかもしれませんが。余談ですがどこかで聞いたうなぎ屋さんの話はとても面白かった。

さて締めに入ります。この本を読むと人間国宝神田松鯉先生に弟子入りし講談の歴史や現代の寄席について教えてもらいながら間近で講談を楽しめる、そんな夢を追体験できます。

確信したのは今、講談という伝統芸能が新しい時代を迎えようとしているということ。この本を手に取ったことで僕は、先陣きって格闘している人間国宝神田松鯉先生、6代目神田伯山先生の活躍を追いかけたいと思いました。型破りな人間国宝と稀代の天才が今という時勢を味方に伝統芸能を生まれ変わらせようとしているのがとても良くわかりました。なので、この時代に生きる僕は生き証人として興味を持ち、追いかけてみたい。

近い将来、講釈場が復活したら必ず足を運ぼうと思っています。今からとても楽しみです。

本当にとても良い1冊でした。